公益財団法人 とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2021年9月 en glad laks (エン グラ ラクス)(第3回)

岩根あずさ(いわねあずさ)

 オスロの街を歩くとあちこちで電動スクーターを目にします。これらは、スクーター会社が提供するレンタルサービスで、オスロに暮らす多くの人の移動手段の一つです。利用者はスクーターについているQRコードを読み取ることでスクーターをレンタルすることができ、スクーターの使用開始と終了はアプリを通して記録します。電力の95%が再生可能エネルギーで賄われているノルウェーでは、この電動スクーターのサービスは“環境に優しい”移動手段として注目を集めています。
 このスクーターのレンタルサービスは若者を中心に人気があります。私がオスロに住み始めてからも新たに2社が参入し、知る限りで6社がオスロでサービスを提供しています。また、大手レンタル会社は二酸化炭素排出ゼロの移動手段を唱えており、電動スクーターの利用を通して都市での車移動を減らし、環境負荷の低い都市作りに貢献できるとしています。電動スクーターに搭載されているバッテリーは充電式で、街中ではスクーターのバッテリー交換に従事している人も時々見かけます。
 一見便利なサービスのようにも思えますが、多くの問題点も指摘されています。その一つは、交通事故の多さです。スクーターの利用には免許などは必要なく、車道、自転車道、歩道のどこを走るべきなのか明確な法律もありません。時速20kmほど出るスクーターで走行中に転んだり、人や車とぶつかったりといった交通事故が頻発しており、規制導入の必要性を求める声もあります。サービスの提供をする各社は18歳以上の利用を推奨していますが、実際には小学生がスクーターを利用している場面もあります。もう一つの問題は乗り捨てられたスクーターの危険性です。このレンタルスクーターは目的地まで利用したスクーターを最寄りの駐輪スポットや返却エリアで簡単に返却できますが、実際には多くのスクーターがあちこちで乗り捨て状態になっています。スクーターが倒れていて道やバス乗り場が塞がれていたり、横断歩道や車道にはみ出していたり…。バッテリーが積まれている電動スクーターは重く、私が移動させるにも一苦労するため、子どもや年配の方、障害を持つ方などにとって乗り捨てられたスクーターは邪魔になるだけでなく、道を塞ぐ危険な存在です。
 “環境に優しい”移動手段、利便性の高さの一方で、他の誰かの生活の危険を助長させてしまう。電動スクーターを見るたびに「共生とは」と考えてしまいます。

岩根あずさ(いわねあずさ)

子どもサポート事業(学習支援サンプレイス)でボランティアをしていた岩根あずささんが、2020年7月よりノルウェーで生活されています。日本から遠く離れた地での生活や現地の様子について、あずささんにレポートしていただきます!