公益財団法人とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2025年12月 이모저모通信(第22回)

皇甫康子(ふぁんぼかんじゃ)

『はじめてのパリ』


韓国の伝統工芸である手縫いのキルティング、「ヌビ」の作品展を友人がパリですることになり、お手伝いと称しての便乗旅行に出かけた。イタリアでの生活経験がある友人の息子さんが、飛行機や宿泊場所を確保してくれ、地下鉄の乗り方まで教えてくれた。宿舎は広い庭がある一軒家で、6人での自炊生活だ。お店でサンドイッチを買うと、7ユーロ、ケーキは5ユーロだった。1ユーロ180円という円安レートなので、なかなか高い。それに比べ、近くの庶民的なマーケットは野菜や果物が新鮮で安い。チーズやパン、ワインも豊富なので毎日買い出しに出かけた。フランスが豊かな農業国だと実感する。ズッキーニのチヂミが好評だった。


作品展のギャラリーはルーブル美術館の近くにあり、パリ在住の日本人やパリのポジャギ(韓国の伝統的パッチワーク)のグループの人たち、東京から応援に来てくれた作家さん、通りがかった人たちと多彩な人たちが訪れてくれた。作品を見た新潟出身の女性が、北朝鮮に帰国したたくさんの友人たちを見送ったことを思い出したと、涙ぐんだそうだ。静岡から来た人は、「住んでいる町にも朝鮮人がたくさんいたのに、帰国船に乗って、みんな北朝鮮に帰り、二度と会えない。いなくなることで、日本政府は責任を取る必要がなくなった。ひどい話だ」と私に教えてくれた。


スマホの道案内を頼りに、韓国文化院、ノートルダム寺院やオペラ座、エッフェル塔、凱旋門、ポンヌフ橋、ソルボンヌ大学、オルセー美術館、モンマルトルを歩き回った。道に迷うと韓国人観光客に声をかけ、教えてもらう。9月のパリは気候もよく、どの建物も素晴らしいし、中にある絵画や彫刻に感動する。奴隷貿易や植民地などで得た富の蓄積のすごさに圧倒されるばかりだ。地下鉄に乗ると、アジア、アフリカ、中近東と多様な人たちが様々な言語で話をしている。2023年の新移民法により、移民への規制は厳しくなったようだが、いつも当たり前に多様な人たちがいて、何だか心地よい。通りには市場があり、住んでいる人たちの国の食材が並ぶ。レバノン料理もはじめて食べた。美味だった。


最後の二泊はパリから鉄道で一時間半のプロヴァンに滞在した。世界遺産になった中世の街を散策すると、木組みの建物とバラの花が美しい。幼稚園や高校もあり、昼時になると、下校する高校生で賑わっている。校門を出たらすぐにヒジャブを被る女子高校生を見つけた。2004年に制定された公立学校におけるヒジャブ禁止の法律を思い出した。どこでも、異なる文化を持つ者は我慢して生きている。


 

皇甫康子(ふぁんぼかんじゃ)

2018年2月号に最終回を迎えた連載「なんじゃ・カンジャ・言わせてもらえば」の執筆者、皇甫康子さんの新しいコラムがスタートします。皇甫さんの想いとメッセージがイモヂョモ(あれこれ)詰まったコラムをどうぞ。