2025年11月 en glad laks (エン グラ ラクス)(第15回)
岩根あずさ(いわね あずさ)
みなさんこんにちは。オスロは紅葉も進み、秋の訪れを感じる季節になりました。以前、ノルウェーの育児休暇制度について紹介しましたが、今回は子どもを迎えた親たちに向けたユニークな制度、barselgruppe(バーセルグルッペ)を紹介したいと思います。
barselgruppe(バーセルグルッペ)とは、barsel(=産褥期)、gruppe(=グループ)という言葉の通り産後の親と赤ちゃんのための集まりを指しています。ノルウェーで出産すると住んでいる地域の保健センターから、自分と同時期に出産したお母さんと赤ちゃんたちが一つのグループに割り振られます。バーセルグルッペでは、お母さんと子どもたちが交流したり、情報交換することができます。社会からの孤立を感じたり育児に関する不安を感じたりしやすい産後の時期に、お互いに悩みを相談しあったり、気軽にお茶に誘ったり、親たちのつながりを作ろうという制度です。バーセルグルッペの集まりでは、助産師や看護師が同席して専門的な知見から育児の相談に乗ってくれることもありますが、1回目の集まり以降はグループ内で連絡先を交換して、どんどん一緒にお出かけをしたり、カフェに行ったりしてね!と案内されます。制度化されたグループを通じて、地域とのつながりが途切れてしまわないように自治体が積極的にサポートしています。
バーセルグルッペはお母さんと赤ちゃんの集まりと書きましたが、もちろんお父さんバージョンもあります。ノルウェーでは両親それぞれに育児休暇が義務付けられており、多くの場合、お母さんの休暇が終わるとお父さんが育児休暇を取ります。その際、お母さん同士がつながっていたグループは、今度はお父さん同士へと受け継がれ、公園やカフェで集まり交流を深めます。ベビーカーを押したお父さんたちがカフェに集う姿は「Lattefar(ラテファー)」と呼ばれたりします。さらに、養子を迎えた家族を対象にしたグループも存在します。
このように自治体が積極的にグループを組織してくれることは、「自分から集まりを探さなければ」という負担を軽減し、育児期の孤立を防ぐ大きな助けとなります。こうした取り組みを通じて、地域社会がより豊かで支え合えるものになっていくのかもしれません。
岩根あずさ(いわね あずさ)
子どもサポート事業(学習支援サンプレイス)でボランティアをしていた岩根あずささんが、2020年7月よりノルウェーで生活されています。日本から遠く離れた地での生活や現地の様子について、あずささんにレポートしていただきます!


