公益財団法人 とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第19回 他機関との連携による包括支援

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 とよなか国際交流協会の相談サービスは金曜日と日曜日だけなので、相談スタッフが相談者に同行して問題解決をサポートしたり、相談者の自宅へ伺ったりすることは、基本的にできないでいます。相談スタッフが外出してしまうと、相談日にスタッフがいなくて、他の対応がストップしてしまうからです。多くの場合は、相談者が自分で行動できるようにサポートしています。細かく説明し、行き先のスタッフと連携したり、本人に事後も確認することで、問題に対応できるようにしています。それは、相談者が「一人で何とかできた」と自信を持つことにもつながります。
 でも、相談者自身の生活環境の中でサポートしたほうがよい場合や、生活環境の中でなければ難しい問題もあります。
 Gさんはよくセンターに来ている人で、いろいろな悩みを折々に話していました。夫や子どものこと、両親のこと、仕事のこと、友人関係や地域の出来事など、Gさんの悩みは多岐にわたっていました。Gさんの悩みを聞いていると、一つひとつ解決していくようなものというよりは、必要なのは、日常の中でGさんの話を聞いたり、実際に一緒に手伝ったり,アドバイスしてくれる「隣人」のような存在でした。そこで私たちは、Gさんが話したいときに、好きなように話せることを大切にしました。また、Gさんがセンターに来て、気持ちよく過ごせるようにも心がけました。しかしそういう私たちの関わりは、Gさんを本当にサポートしているわけではないとも自覚していました。できれば、Gさんが住まう地域での支援につながれば、と考えましたが、Gさんはあまり乗り気ではなく、幾か月が過ぎました。
 ある日、Gさんは家庭での悩みを語りました。それは社会福祉協議会のコミュニティ・ソーシャルワーカーの支援を受けられることだったので、「手伝ってもらわない?」と聞いてみたところ、Gさんは「そうしてほしい」と言いました。それから、Gさんは他の様々な機関による包括的な支援につながりました。Gさんが困ったり悩んだりしたときに、それぞれに支援できる状況になったことは、大きな一歩だと思います。
 豊中市では、地域での見守り、関わりを丁寧にしてくれる社会福祉協議会があるので、相談者自身が住まう環境で支援してもらうことができます。国際交流協会ではできないことをやってもらえる機関があり、また連携もできるため、相談者の実情に応じた支援ができます。〝機動力″が弱い国際交流協会の相談サービス体制での限界も、他の機関との連携でカバーできたケースでした。

(2011年4月号より)

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。