公益財団法人 とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第25回 移動する子どもたち

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 国際結婚が必ずしも初婚同士ということはなく、お母さんが日本人男性と再婚して、日本に来ることになる子どもがいます。これまで相談で聞いたなかでは、来日した時の子どもの年齢は様々でした。どの子どもも、お母さんと暮らせる喜びの一方で、きっといろいろな葛藤や不安、苦労があったと思います。
 その中でも、より大変だなと思われるのは、思春期、しかも高校入学以後の年齢より大きな子どもたちです。だいたい、来日時の年齢が16歳から18歳ぐらいまでになります。
 それよりも年少で、義務教育に行く年齢の場合は、中学校に入学します。日本語がわからず、勉強も大変で、すぐさま受験が迫っている大変さはありますが、なんとか高校に行くルートにつながらないわけではありません。
 しかし高校以後の年齢の子どもは、新たに高校に入学することが非常に困難で、たとえ入ることができても、全く不案内な環境に疲れ果てたり自信をなくしてしまい、しだいに学校から足が遠のきます。働きたいと思いますが、日本語ができないし、何より年齢的に仕事を見つけることは簡単ではありません。それで、何もすることがなく、何もできることがなく、毎日をどう過ごしていいかわからないようになってしまいます。学校に行くのも困難、仕事も困難で、八方ふさがりの状態で、将来への夢や希望も描きにくくなります。「こんなことしたいなぁ」と思っていても、それはあまり現実的でなかったり、短絡的だったり、飛躍しすぎていることが多く見受けられます。そういうなかで、親子関係もぎくしゃくしたりしていくことがあります。そういう子どもたちを支える環境が、今の日本にありません。
 行くところがあること、所属する場があることというのは、誰にとってもとても大切ですが、子どもには非常に大切なことです。その中で学んだり経験したり、守ってもらえるからです。
 再婚した外国人のお母さんから、母国に残した子どもを呼び寄せたいと相談があったとき、その手続き方法を説明し、支援します。お母さんは、日本に来れば学校に行けるとか、将来が開けると希望を持っていることが多いのですが、子どもの年齢のことを考えると、現実の困難さを目の当たりにしている私は、とても複雑な気持ちになっているのが正直なところです。しかしお母さんに対して、「日本に来ても大変ですよ」と再考させることもできません。母親としては、子どもと一緒に暮らしたいに違いないでしょうから。
 子どもたちに何もしてあげられないし、よい方法も見つからないので、今までは複雑で心配な気持ちでいました。しかし、今年度から協会で、この年齢の子どもたちが集える場づくりを試行することになりました。こういう事業への展開があると、相談をしていても無力感に終わらずにすみます。子どもの場の一方では、この子どもたちのお母さんを支えることもテーマになるでしょう。

(2012年4月号より)

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。