公益財団法人 とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第35回 他事業との連携

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 とよなか国際交流協会では、多様な事業を展開しており、外国人相談サービスもその一つです。相談に来られたときは、その問題を解決するだけの対応ではなく、他の事業との連携も多くあり、それが相談者に効果的な影響をもたらしています。
 Aさんは、ある問題について相談に来ました。病気を抱え、その時のAさんは心身ともに困ぱいしていました。Aさんの問題の解決は長い期間が必要でしたが、一定の方向性が見えたころ、Aさんはやや元気を取り戻した様子に見えました。それでAさんに「英語・外国語体験事業」の講師への参加を勧めました。これは、市内の学校に講師として赴き、言葉や文化についての授業を行うものです。短期・不定期の派遣なので負担が少ない上に、自分自身の文化について提供するという点で、エンパワメントにつながりやすいのです。参加したAさんは、他の仲間との出会いで交流が増え、以前よりも元気な様子です。
 Bさんもまた、ある問題を抱えて相談に来ました。Bさんは、気持としても実際にも孤立していて、友人が少なく、家庭以外の関わりが乏しい状況でした。問題の解決には、長い期間かかりました。Bさんの気持ちが落ち着いて、自分の方向性を確かに感じられるようになってきたころ、Bさんは仕事をしたいと思うようになりました。それで、「もっともっとつかえるにほんご」への参加を勧めました。Bさんは日本語のコミュニケーションには支障がなかったのですが、就労場面での日本語に自信を持っていませんでした。それをきっかけに、仲間と出会い、就労し、Bさんは見違えるように元気になっていきました。
 Cさんの問題は根深く、折々にそれが「トラブル」として浮上し、Cさんが安定的に暮らしていくことを阻んでいました。Cさんは、社会参加をすることはとても困難な状況にいました。ある時、Cさんに「CCカフェ」への参加を勧めてみました。これは不定期で開催される、単発の料理会です。当日しんどくてできなくてもいいし、失敗してもいい、手伝うからやってみましょうと話しました。初めは不安そうだったCさんですが、いざやってみると、とてもうれしく、楽しかったそうです。Cさんも人との関わりが少ない状況に長年いましたが、これをきっかけに、社会参加してみたいと思うようになりました。
 センターで多様な事業が展開されているので、相談対応だけでは解決できない側面や、より一歩進んだ点についても支援することができ、それが相談者にとって貴重なきっかけとなっていっているようです。小さな、でも実は大きな一歩を踏み出すきっかけを提供できているのではないかと思います。事業間のネットワーク、相互作用により、それぞれがより大きな効果をもたらしていきます。

(2013年11月号より)

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。