公益財団法人 とよなか国際交流協会

なんぢゃ・カンヂャ・言わせてもらえば

第106回 交流が未来の希望をつなぐ

皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)

 札幌の朝鮮学校で毎年開催されている、「日朝友好促進交換授業会」に参加してきました。1997年から開始され、今年で22回目を迎えます。当時の朝鮮学校の校長先生が日本の学校の先生たちの授業を生徒たちに受けさせたいという願いで、交換授業会が実現したそうです。
 11月25日の札幌は零下まで気温が下がり、雪が降り続いていましたが、小学校から高校までの全学年で午前中の授業が開始されました。公開授業では、チマ・チョゴリ姿の先生が一年生の朝鮮語の授業を行っていました。生徒は一人。まるで民族学級を見ているようです。手厚く授業をする様子は九九を朝鮮語で斉唱する、二年生5人のクラスにもありました。その昔、私も朝鮮語で覚えていたなと、記憶がよみがえります。
 交換授業で目を引いたのは、高校生対象の「ジェンダー/セクシャリティー入門」の授業でした。「人の性別は何によって決まると思うか?」「見知らぬ人の性別を推測する手がかりは?」「性別がなかなかわかりづらい人はどんな人?」などの設問からはじまり、自分が持っているイメージが、どのような情報によって作られているのかを検証することができました。
 今回、お手伝いをしたのが、家族写真について日朝で語り合うという授業です。昨年6月に発刊した本、「家族写真をめぐる私たちの歴史」を紹介したあと、少人数のグループで家族写真を見せながら自己紹介をするというワークをしました。35年前に撮られた曾祖母の還暦祝いの家族写真や、一歳の誕生日の写真、韓国からの留学生の卒業式の家族写真など、みんな雄弁に語っていました。それを聞いている日本人の高校生や大学生は、はじめて聞くことばかりで興味津々の様子です。朝鮮学校全員の集合写真を持ってきた高校生たちは、まさに、これが自分たちの家族と胸を張って言います。
 「朝鮮人だと感じるときは?日本人だと感じるときは?」という意見交流では、やはり、ミサイルの話題が出たときに怖いと感じるという意見や、差別や排除されたとき、キムチを食べ朝鮮語を話しているときなど、学校での毎日という意見が多かったです。学校では朝鮮語、帰宅すると日本語というバイリンガルな生活を送っている高校生たち。北朝鮮や韓国、日本の政治情勢や社会状況に翻弄されながらも、ぶれない民族意識を持って、すくすくと育っています。若い先生たちも、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という学校づくりを目指し、活き活きと楽しそうです。信頼感にあふれた朝鮮学校を目の当たりにし、これまでの私の思い込みも一蹴されました。
来年も希望をつなぐ交流をたくさんしたいですね。「セヘポンマーニパドウセヨ!」

皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)

1957年大阪生まれ兵庫育ちの在日朝鮮人(朝鮮人は民族の総称)。
在日女性の集まり「ミリネ」(朝鮮人従軍慰安婦問題を考える会)代表。
「家族写真をめぐる私たちの歴史-在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性」責任編集。2016年、御茶の水書房刊。
小学校講師。