公益財団法人 とよなか国際交流協会

なんぢゃ・カンヂャ・言わせてもらえば

第21回 ようこそ!チャルオショッスムニダ

皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)

 一一月四日、韓国のユネスコスクール、上黨(サンダン)高等学校の八人が呉服小学校に来てくれました。三年前の初めての交流の時には、一週間しか準備期間がなく、右往左往の状態でしたが、日頃の学習を発表したり、一緒に体験したりして本当に楽しい交流になりました。今回も、特別なことはぜず、二年生は一年生に教えるために練習した、韓国のペンイ(こま)やチェギチャギ、覚えたての韓国の言葉などを発表したり、日本のあそび、剣玉やお手玉を高校生に教えてあげました。三年生は、ハングルで自分の名前をカードにして、高校生に確認してもらいます。五年生は各クラスが三年の時の地域学習、「てんこもり池田」を発展させ、渡来文化や五月山、ラーメン記念館など、池田の名所を発表しました。三学年との交流が終わり、次は六年生です。来ていただいた方たち全員に、韓国語で歓迎の挨拶をし、呉服小学校の一年間の活動を紹介した映像を見てもらいました。そして、六年生八五人が韓国の歌、「故郷の春」をリコーダーで演奏しました。
 韓国の高校生たちの感想を聞くと、「昨日は京都に行き、金閣寺などの日本の名所を見学しましたが、今日は池田の名所を五年生から教えてもらい、とても興味がわきました。準備が大変だったと思います。」という意見や、「初めて会って、言葉も通じないのに、子どもたちがものおじしないで、すぐに近づいてくれて仲良くなれました。」という感想。そして、「外国に来るというのは、とても緊張することです。でも、今日は韓国語で挨拶を聞いたり、韓国の歌の素晴らしい演奏を聞くことができたので、とてもリラックスして、安心することができました。」と感謝してくれました。
 あっという間に打ち解けて、積極的に交流する子どもたちの姿を見て、一番驚いていたのは担任の先生たちでした。「アンニョンハセヨ」「カムサハムニダ」を連発し、身振り手振りで意思疎通をしたり、相手の表情から気持ちを読み取ることもしていました。子どもたちからは、「日本で活躍している韓国のプロ野球選手の名前を知っているか。」「少女時代は韓国でも人気があるのか。」という、いまどきの質問が多くだされていました。中には最近の中国との関係悪化のニュースを見たようで、「韓国と日本が戦争をしたらどうするか。」という質問まで飛び出しましたが、「戦争にならないために勉強したいし、今みたいに交流することが大切です。」と天晴れな答えが返ってきました。人類が二度と戦争を繰り返さないために、第二次世界大戦後に創設された、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の精神そのものですね。
 「サントッキ」を高校生と大合唱したり、一緒に記念撮影をしたり、あっという間の短い交流でしたが、得たものは大きかったです。高校生たちに「母国語教室」の部屋にある展示も見てもらいました。子どもたちが作った、ヨン(凧)やトルハルバンの置物、ハングル習字などを見て、「かわいい。すごい。」と感嘆の声を上げ、写真を撮っていました。
 いつもの学校風景とは違う、新しい出会いに、子どもたちは有頂天でした。日頃の学びが韓国の高校生に評価され、さらに学びたいという意欲でいっぱいです。発見だらけのこんな交流、やめられません。

*追記 このコラムを書き終えた翌日の一一月二四日、大延坪島が砲撃を受け、民間人の死者が出たと報じられました。親族がいる「在日」もショックですが、実際に砲撃を受けた、韓国の人たちのショックはすごいです。戦争への恐怖が、人々の心に重くのしかかっています。交流することで、安否が気になる人が増えていきます。絶対に戦争を許さない、という強い気持ちを持ちたいと思います。

皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)

1957年大阪生まれ兵庫育ちの在日朝鮮人(朝鮮人は民族の総称)。
在日女性の集まり「ミリネ」(朝鮮人従軍慰安婦問題を考える会)代表。
「家族写真をめぐる私たちの歴史-在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性」責任編集。2016年、御茶の水書房刊。
小学校講師。
家族写真を使って、個人のルーツや歴史を知り合うワークを開催している。