公益財団法人 とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第12回 スタッフのつぶやき

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 毎月この原稿を書いていますが、今回はどうも進みません。いくつかアイデアを出して書いてみても、途中で行き詰ってしまっています。
 今年になってからとても忙しく、勤務時間内に原稿を書く余裕がありませんでした。忙しさは今年になってからだけでなく、なぜか今年度は、例年よりもずっと相談件数が増えました。また、複雑だったり、時間がかかる相談が多いなとも思います。
 忙しくてもそれなりに原稿が進むこともありますが、今回のように行き詰っているのは、実はそれ自体が大切なメッセージかもしれないと思いました。
 この仕事をしていると、「相談を聞いていて、疲れたりストレスがたまったりしませんか?」とよく聞かれます。相談はほとんど100%、困ったことや辛いことなので、そういう話を聞くと、気が重くなってしまうのではないかと皆さん考えるのだと思います。でも実は、疲れたりストレスがたまったり、落ち込んだりすることはほとんどありません。そうならないよう、トレーニングと経験を積むからです。私の心が冷静さや客観性を保てることが、相談者に対して適切な対応をする上でとても大切だからです。もし私が話を聞いて落ち込んだり辛くなったりしてしまうと、逆にそれは、私がきちんと対応できていないということになります。私が、自分自身の気持ち
に揺られて、それが相談者の対応に影響してしまうからです。
 ということで、ストレスがたまることはほとんどないのですが、時々、気がつかずにいることがあります。去年、ぎっくり腰になってしまいました。その前の数週間、何となくもやっとした疲労を感じていました。そのままやり過ごしていて、そしてぎっくり腰!私は、自分が心身ともに落ち着いた状態ではなかったことに気づかされました。そうなったのには、ある相談のことも含まれていました。それに気づかずにいたら、相談対応は適切ではなくなっていたかもしれません。ぎっくり腰をきっかけに、自分自身と仕事を見直しました。相談は、新たな切り替えしをして進めることができたと思います。
この原稿がちっとも進まないのに疲れてきて、「どうしてかな?」と考えをめぐらせたところ、そういえばずっととても忙しかったし、自宅で原稿を書く元気も時間もあまりなかったな、と思い当たりました。今回は、この原稿が、自分を振り返るきっかけを与えてくれたようです。
 本当は、常に適切に対応すべきですけれども、こんなふうに私の方に波が起こることもあります。人と人との関係のなかでつむいでいく仕事ですから、それもまた醍醐味にしていけるようでありたいです。

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。