公益財団法人 とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第3回 在留資格(ビザ)の問題02

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 先月は、オーバーステイになったものの、日本人と結婚して在留許可を得ることができたAさんの相談についてでした。今月は、在留資格を得ることができなかった相談です。
 Bさんは日本人男性と結婚しましたが、夫があまりにひどい暴力をふるう上に、同居していた夫の母もBさんにつらくあたりました。Bさんは逃げ出し、友だちのところで生活をすることにしました。そして、お金がないので仕事を始めました。在留資格の期限が迫りましたが、夫に更新手続きを頼めないので、そのままオーバーステイの状態になってしまいました。
 ここまではAさんと同じような過程です。このような外国人女性は少なくありません。夫から暴力をふるわれ、頼る実家がなく、相談できるところもわからず、とにかく逃げて、友だちのところで過ごす。お金を持っていないので、友だちに借りたり、働いてとりあえず生活のお金を得る。Bさんも、こんなふうにして何とか生きていかなければならなくなりました。Bさんはその後、別の日本人男性と恋愛し、子どもができましたが、出産後しばらくして、日本人男性は認知もせずに行方がわからなくなってしまいました。
 Bさんの場合は帰国しなければならなくなりました。調べてみると、夫は勝手に離婚届を出していました。Bさんは日本人と結婚していないので、配偶者の在留資格を申請できません。子どもは日本人の子ですが、認知がないので日本国籍をとることができません。Bさんは、子どもは日本人ですから、日本で生活させてあげたい気持ちがありました。でも、Bさんと子どもが合法的に暮らす方法はありませんでした。Bさんはこれまでの苦労を涙ながらに語りながらも、自分と子どもの人生のために決断し、帰国しました。
在留資格はさまざまな条件があり、それに合わなければ資格を失います。Bさんは在留資格の条件に合わない状況になったのですが、それは決してBさんの責任ではありませんでした。
 Cさんは、夫と合意して離婚しましたが、子どもの将来を考え、親権を夫にしました。近くに住んで、子どもと行き来して見守り育てていこうと思っていました。しかし親権を夫にしたために、Cさんは在留資格を得ることができず、帰国しなければならなくなりました。
 このように、在留資格は単なる手続きではなく、人生を動かしたり変えたりしてしまう側面を持っています。在留資格の手続きに関する相談はとても多いのですが、それは単なる手続きのサポートではなく、人生をともに考え、決断し、支えていくプロセスでもあるのです。

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。